【未来につながる探究学習】八王子市私学プレゼンテーションコンクール#3 | 晶文社 中学受験案内

【未来につながる探究学習】八王子市私学プレゼンテーションコンクール#3

特集

第2回八王子市私学プレゼンテーションコンクールの様子を続けてお伝えします。
審査員の徳増孝一先生(大妻多摩中学高等学校・元校長)、内藤良夫先生(共立女子第二中学高等学校・元教頭)からの全体的な講評として、以下のようなお話がありました。

「どの学校もよくよく調べられていて良かった」
「非常に面白かった」
「去年より発表態度もテーマもグッとレベルが上がった」
「優劣つけがたく、本当に紙一重で、非常に優秀だった」

出場校9校のうち、ここでは中盤3名の発表について紹介します。

八王子で今なお継承され続けている伝統芸能 八王子車人形 (明治大学付属中野八王子 新井優斗さん)

新井さんは、学校の課題で八王子市について調べ、様々な特徴を知るうちに「八王子の伝統・文化」に行き着きました。多摩織や獅子舞などの中から選んだのは「八王子車人形」。同じテーマの発表者がもう1名いますが、視点の違いにも注目です。

【プレゼンテーションの流れ】

八王子車人形を調べようと思ったきっかけ

江戸時代から伝わる代表的な伝統芸能

八王子車人形の成り立ち

特徴(人形浄瑠璃との違い、車人形のしくみや操作の仕方など)

鑑賞・取材・感想

伝統芸能・文化の課題(担い手不足、需要の低下など)と解決のための提案

写真を多用し、背景に定式幕を配置した発表スライド

発表スライドには、写真を多く載せることでイメージしやすく、図解を入れたり写真内に囲みや番号を付けたりすることで理解しやすく、3色の定式幕をあしらって古典芸能の雰囲気を出す、といった工夫が随所に見られました。情報が詰まった濃い内容でありながら、整ったレイアウトでした。
車人形の歴史について、その始まりと広まり方を押さえた新井さん。更に、八王子車人形を上演している「西川古柳座」の公演を調べて観に行き、座員から話を聞いて、人形を操作する機会まで得ることができました。この2点は、審査員から特に評価されました。

新井優斗さん
新井優斗さん

八王子市内の中学校や高校で、芸術鑑賞の一環として八王子車人形を鑑賞することを提案します。伝統芸能や文化に関心を持つ若い人が増えることで、課題解決につながるのではないかと思いました

🎤発表者にインタビュー!

Q.今後、車人形にどのように関わっていきたいですか?
A.:高校生ではボランティア活動もあるそうなので、やってみたいと思いました。
Q.プレゼンは学校でだいぶ練習されましたか?
A.:はい。放課後に練習しました。どこを強調すればよいかを、ものすごく練習したので、本番、それをやり通せたことが良かったと思います。
Q.今日のテーマから、広げて調べたいことはありますか?
A.:今回は八王子に限ったことですが、今度は全国の伝統芸能も調べてみようと思います。

【素晴らしpoint】

スライドも発表原稿も完成度が高く、驚嘆のプレゼンテーションスキルでした。実際に鑑賞し、人形操作を体験したことが、研究の厚みに。「伝統芸能」という広い枠組みで捉える視点も感じられました。


高尾山の交通 (八王子学園八王子 羽生田結愛さん)

日本遺産にも登録され、八王子が誇る高尾山。交通至便で日帰り登山ができるとあって、多くの人が訪れます。羽生田さんは学校で、高尾山の登山道、ケーブルカー、リフトについて調査。この日の発表は登山道に絞り、高尾山の魅力に迫りました。

羽生田結愛さん
羽生田結愛さん

高尾山の登山道と、そこで見たり感じたりできる自然の大切さについて調査をしました。調べたことを基に自分なりの意見を発表したいと思います。

【プレゼンテーションの流れ】

プレゼンの概要

高尾山の6つの登山道それぞれの特徴
1号路:木の生命力  
2号路:環境の豊かさ 
3号路:緑の多さ など

まとめ(高尾山への誘い)

何より良かったのが、原稿を見ずに発表したこと。しかも語りかけるようにスラスラと。高尾山で実際にガイドを聞いているかのようで、木々や景色を見ながら鳥の声や滝の音を聞き、山の空気を吸い、山道を歩いたような気にさせてくれました。高尾山という自然を介して知らない人と交流が生まれるのではないかという考えも示され、感性豊かな内容でした。
高尾山をよく知る審査員の先生が「1号路から6号路まで、それぞれの魅力、良さをきちっとテーマごとに把握していましたね。よく調べていて、私も参考になりました。また行く楽しみができました」と講評。羽生田さんの思いが伝わったようです。

スライド作成で心掛けたのは、シンプルに要旨だけを伝えること

🎤発表者にインタビュー!

Q.緊張しましたか? とっても楽しそうに発表していましたが。
A.:緊張しました。「こういうことがあるんだよ」って、皆さんに是非知ってもらいたいという思いを強めて、頑張って話しました。
Q.発表原稿なしでしたね。暗記したものを話しているようには見えませんでしたが?
A.:先にスライドを作って、後からセリフを考えるのではなく、1枚1枚のスライドに対して「こういうことを伝えたい」「こういう思いは喋りたい」というのを、ひとつひとつ確認しながら作りました。
Q.苦労したところは?
A.:落ち着いて話すことが難しかったかなと思います。人前に出てしまうと、早口になったり、戸惑ったり、つまずいちゃったりするので。たとえ時間をオーバーしても、落ち着いて話して、伝えたいことは伝えようと努力しました。

【素晴らしpoint】

「高尾山に行ってみよう」と思わせてくれました! それはすなわちプレゼン力の高さです。また、調べたことだけでなく、調べたことから導かれる考えを交えていたのもgood(例:野鳥が多い→自然環境が整っている、季節によって植物が変わる→見頃に合わせて訪れる)。


めじろ台ってこのまま住んでて大丈夫?-住み続けられる街づくり- (穎明館 吉澤馨さん)

2019年の東日本台風(台風第19号)の際、吉澤さんは、自宅近くの川が溢れそうで怖かったと言います。道路崩落や浸水被害なども思い出し、八王子市がその後、どのような治水対策を取ったのか、彼が住む「めじろ台」は安全なのかを知りたいと思ったそうです。

【プレゼンテーションの流れ】

このテーマを選んだ経緯

八王子はどういう地形か

八王子市の治水対策の歴史(+観光スポットの案内)

八王子市の治水対策の現状、八王子市水循環部水環境整備課への取材

家で出来る治水対策、ハザードマップからわかること

まとめ

ハザードマップを示して説明
吉澤馨さん
吉澤馨さん

街づくりの一番の目的は、命を守ることです。正しい非難情報を早めに伝えることができて、普段から住民も意識していれば、被害があっても、命を守ることができると思います。

苦労したのは、治水対策の現状に関するインタビューや、治水対策改善情報の調査。それらを乗り越え、「八王子市は必要な対策を国や東京都と連携を取り、しっかり進めていることがわかりました。めじろ台が安全そうであることも知り、一安心」との結論に至りました。
審査員からは「今後の大地震、震災に向けて研究の輪を広げ、地質、地盤の研究、調査をしてみても、更に面白くなるのでは」という発展的なアドバイスも。最後は「地域について詳しくなることは、生活していく上で必要なことだと思うので、機会を見つけてもっと調べてみようと思います」と締めくくり、飽くなき探究心が見られました。

🎤発表者にインタビュー!

Q.このテーマにしたのはなぜ? 地形や治水といった分野が好きなのですか?
A.:いや、こういうテーマを取り上げる人は少ないんじゃないかと。テーマを考えた時に、多くの人に共感してもらえることを話そうと思いました。川の近くに住む人や、台風で怖い思いをした人も多いと思うので、災害やその被害をどう防ぐか、というのを伝えるように、プレゼンを考えました。
Q.他の人と被らないよう配慮したテーマでしたが、調べていく中で楽しかったことは?
A.:街づくりなんかが面白いなって思い、興味を持ちました。
Q.今回の調査を生かして、広げていきたいことはありますか?
A.:浸透施設以外にも、どういうことが出来るかを考えたり、審査員の先生が言っていたように、八王子の地質を調べたりしていきたいなと思います。
*雨水を地下へ浸透させる施設

【素晴らしpoint】

自分の体験を基に、生活に直結したテーマを選んだ視点が優れています。また、まず「めじろ台ってこのまま住んでて大丈夫?」という疑問があり、その答えを探して調査を進め、結論づける構成や、街づくりの目的を自分なりにきっぱりと定義づけた点も良かったです。

●当日の映像が八王子市私学プレコン実行委員会のWebサイトで配信されています。https://haishin.work/hachioji-shigaku

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